2010年に、東北大学東北アジア研究センター叢書として翻刻・刊行した、仙台藩士・別所万右衛門 の天明及び天保飢饉の記録。10年越しでリポジトリ公開いたしました。多くの方にご活用いただければ幸いです。
http://hdl.handle.net/10097/00128125
別所万右衛門の記録は、2005年、初めての大学での非常勤講師での資料探しで潜り込んだ東北大学附属図書館本館の書庫で、探していた資料の隣に配架されていた原本を見つけたのが出会いです。「切」という仙台藩独特のお金の単位から仙台藩の記録だろうとは思って、取りあえず全ページの写真を取って、数年放置していました。その後、必要があって読み始めところ、内容の豊富さに驚き、一か月間は文字通り寝食を忘れて解読しました。その間、東北大学東北アジア研究センターに勤務し、同センターの出版物の枠組みを使わせてもらって刊行しました。慌て仕事で誤植も多く、今回のWeb掲載に際しては気づいた範囲で訂正しています。
戦前に仙台藩領の飢饉記録の公刊を精力的に行った、旧制第二高等学校校長の阿刀田令造氏が、原本の破損の激しさを理由に翻刻を断念した、ということは後から知りました。解読作業はデジタル画像を用いており、データが容易に得られる21世紀だから出来た仕事なのかも知れません。
さらに出版後、センターのサイトに載った紹介文をきっかけに、末裔の方と連絡が取れ、筆者・別所万右衛門の生没年や墓所を知ったことも、いい思い出でです。歴史の情報をネットで公開することの可能性を体感し、また古文書と人とのつながりの意味を考えた初期の経験でもあありました。
さらには、短命の仙台藩主・伊達斉邦を追いかけ始めるきっかけにもなっています。伊達斉邦の詳細については、詳細は拙著『少年藩主と天保の危機 仙台藩主・伊達斉邦の軌跡』(大崎八幡宮仙台・江戸学叢書 2017年)をお読みいただければ幸いです。